毎日「しっかり」睡眠をとれていますか?

睡眠について、荏原 太先生にお話を聞いてみました。

荏原 太 医師

1996年東京慈恵会医科大学卒業後、同大学糖尿病・代謝・内分泌内科入局。
2001年町田市民病院糖尿病内科医長を務め、2003年にデンマークのステノ糖尿病センターに留学。
2010年に高田中央病院に入職。 2015年に院長就任し、2022年より現職。
研究分野は糖尿病疫学、行動心理学、睡眠時無呼吸症候群、認知症予防、腸内マイクロバイオーム
各種健康習慣アプリやPHRなどを日常診療に取り入れている。

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日本人の睡眠時間は、なぜこれほど短いのか?

実は、日本人は先進国の中でも“慢性的な睡眠不足”の状態にあります。

厚生労働省が発表した「健康づくりのための睡眠ガイド2023」によると、令和元年の国民健康・栄養調査結果11において、1日の平均睡眠時間が6時間未満の者の割合は、男性37.5%、女性40.6%であり、性・年齢階級別にみると、男性の30~50歳代、女性の40~50歳代では4割以上を占めているということです。

成人では6時間以上を目安に、体感的には7時間前後の睡眠をとれるとよいとされています。

また、令和3年のOECD(経済協力開発機構)のデータによると、日本人の平均睡眠時間は調査対象33カ国の中で最も短いことが分かります。

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なぜここまで眠れていないのでしょうか?

結論から言うと、個人の問題というより社会全体の構造的な問題ですね。

大きく分けると理由は二つあります。

・日本では「睡眠の重要性」を体系的に学ぶ機会がまだ少ない。
海外では、学校教育や学校保健の中で睡眠を健康や学習を支える生活習慣として扱う例があります。

国では、睡眠の重要性、睡眠パターン、睡眠障害、眠気運転、不眠などを学校で扱うことができるテーマとして示されています。
英国でも、保健教育の中で運動や栄養と並んで十分な睡眠の重要性を教えることが位置づけられています。
フィンランドでも、健康教育や児童生徒のウェルビーイングが重視され、地域のカリキュラムでは睡眠と休息、生活リズムが扱われる例があります。

日本でも、睡眠を「個人の努力」だけにせず、子どもの頃から学べる健康リテラシーとして位置づけていく必要があると思います。

・生活習慣と社会構造。
 日本を含む多くの地域では、子どもの頃から塾や受験中心の生活になりやすく、そこにスマートフォンやSNSが加わって、夜遅くまで起きているのが当たり前になってしまうことがあります。
 仕事の面でも、少し前までは「頑張って長時間働くことが評価される」文化がありましたよね。
 最近は改善されつつありますが、その影響は今も残っています。

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スマホが奪っているのは「時間」ではなく「深い眠り」

特に若い世代への影響が出やすいと言われます。

今の子どもたちは、

•    友人関係の維持(メッセージアプリやSNS)
•    動画やオンラインゲームへの没入 

いった理由で、夜もスマホに触れ続けています。

こうした環境の中で、眠る直前まで脳が興奮した状態になっています。

海外に目を向けると、学校でのスマホ使用制限や夜間利用のルールづくりを進める国・地域もあります。
学校にスマホを持ち込ませない、夜間のSNS使用を家庭や学校で管理する、といった取り組みです。

一方、日本は「自由度の高い社会」であるがゆえに、規制が進みにくい。でもその結果、睡眠不足とデジタル依存が同時に進行しているという現実があります。

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 個人的には、まず若い世代の睡眠を守ることが最優先だと思っています。彼らが将来、親になるわけですから。


年齢によって「睡眠の悩み」はまったく違う

どの世代に、どんな問題が多いのでしょうか?

大きく分けると、

•    若年層 
•    高齢者

この二つです。

若年層の問題の代表的な例は、人気の「オンラインゲーム」です。うっかり深夜までゲームに夢中になり、睡眠時間が十分に取れず慢性的な睡眠不足になるパターンがあります。
また、働き盛りの世代でシフトワークや変則勤務をしている方なども注意が必要です。

夜勤→休み→日勤

のように、リズムが頻繁に変わる働き方は、体内時計が安定しにくくなり、

・睡眠の質
・日中の集中力や判断力

が大きく低下します。
これは、ドライバーや医療従事者など一瞬の判断ミスが命に関わる職業では、極めて深刻な問題です。

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高齢者の「眠れない」は、本当に不眠?

高齢者の方からよく「眠れない」と相談されますが、詳しく見ると、

•    ベッドに入っている時間が長い
•    実際の睡眠時間はある程度とれている 

というケースがとても多いです。
「眠れない」のではなく、実はそれほど眠くないのにベッドに入ってしまったている状態なんですね。

この要因としては、昼間にうたた寝をしていたり、夜中までテレビを見ていたりすることが考えられます。

「そろそろベッドに入る時間だから。」そう思って頑張ってベッドに入っても寝られない。でも、それもそのはず。実際にはまだ眠くないのですから。

こうして、「ただ眠くないだけなのに、不眠と感じる」 という現象が起こるわけです。

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睡眠は「見える化」して初めて変えられる

一番大事なのは、「今の自分の睡眠を知ること」です。

  は、睡眠を感覚だけで判断しがちですが、実際にはズレが大きい。
そこで、睡眠日記をつけたり、ウェアラブルデバイスで睡眠パターンを可視化したりすることが、とても重要です。
 

朝に睡眠パターンを確認し、前日の行動を振り返り、日中の眠気の度合いを確認することにより

• 「昨日は本当は眠れていなかった」
•  「今日は早く休んだ方がいい」

と、自分で納得できるようになります。
この「納得感」が、行動変容につながるんです。

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また先ほどの高齢者のケースは、このように可視化することで、「あ、意外と眠っていたんですね」 と本人が気づくことが多いです。
薬ではなく、生活習慣を少し変えるだけで改善するケースも少なくありません。


今日からできる、睡眠の質を高める具体策

すぐ取り入れられることはたくさんありますが、特に重要なのはこのあたりですね。

【やった方がいいこと】
・日中に身体を動かす
 たくさん運動をしなくてもいいですが、ライフスタイルに合わせてウォーキングだったりヨガだったり、身体を使うことで寝つきがよくなりやすいです。
特に、緑がある場所で身体を動かすのはいいですね。自然は心をリラックスさせてくれ、それが自律神経を整えるサポートをしてくれます。公園を歩くだけでもおすすめですよ。
 

寝る1~2時間前くらいに湯船につかる 
フィンランドで日常的なサウナもそうですが、自律神経を整えることが大切ですね。日本だとこれは入浴にあたります。
リラックス効果にもつながり、続けやすい習慣のひとつです。ただ、熱すぎるお湯に入る逆効果になる場合があるので、要注意です。
また、できれば、入浴後はスマホなどのデジタルデバイスは触らずにいるのがおすすめです。

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・寝室は暗くする。
 寝ている間は弱い光でも覚醒しやすくなり、睡眠の効率が下がってしまうことがあります。また最近の照明器具やスマートフォンにはLEDが使用されており、体内時計への影響が比較的強い短波長光、いわゆるブルーライトを含むものが多くあります。ただし影響は光の色だけではなく、明るさ、時間帯、浴びる時間、距離にも左右されます。
寝室はできるだけ暗くし、就寝前はスマートフォンやタブレット端末の使用を控えるとよいでしょう。
 

・起床時間を決める
何時に寝ても、同じ時間に起きることは大切です。
厚生労働省が発表している「健康づくりのための睡眠ガイド2023」でも、起きる時間を大幅に変えてしまうと、体内時計のずれによる健康への悪影響が報告されていると記載があります。いわゆる「社会的時差ボケ」とも呼ばれる休日の「寝だめ」は、十分な対策になりにくく、体内時計をさらにずらす可能性があります。
休日にたくさん眠らなければ疲れが取れないと感じる時は、平日の睡眠時間を見直すことから始めましょう。

 【避けた方がいいこと】 

夕方以降の昼寝や長すぎる昼寝
 昼間の長い昼寝は、就寝時の寝つきや睡眠の質に影響します。15~20分程度の睡眠であれば、ストレスや疲労を軽減するサポートもしてくれますが、それ以上の昼寝は避けましょう。 

・夜遅い食事や飲酒
 遅くに食事をすることや、飲酒は眠りを浅くします。入眠後の前半に深い睡眠が得られにくくなることで、睡眠の質が低下することがあります。もし寝るために飲んでいる「寝酒」をしている場合、かえって睡眠の質を下げることがあります。 

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・寝る前にスマホやデバイスを触る
これも、厚生労働省の発表している「健康づくりのための睡眠ガイド2023」で確認できるのですが、睡眠を促すホルモンであるメラトニンの分泌は就寝予定時刻の2時間程前から始まり、それ以降にスマートフォンなどのブルーライトを含む強い光を浴びると、催眠効果のあるメラトニンの分泌が抑制されることから、睡眠・覚醒リズムが遅れ、入眠が妨げられることが報告されています。 

・寝る直前の激しい運動

就寝前1時間以内の激しい運動は夜の眠りを妨げる可能性があります。
ジムでの運動はできる限り就寝2~4時間前までに終えて、ベッドに入るまでの間にリラックスする時間を設けると良いでしょう。


睡眠は「人生のパフォーマンスを底上げする習慣」

最後にお伝えしたいのは、これです。

 日常の中で自律神経を整える代表的な手段は、主に2つあります。 
それは、

「呼吸」睡眠」です。

「今日は数値的に良くないから、早く休もう」 そう判断できるようになるだけで、生活の質はかなり変わります。

睡眠は、単なる休息ではありません。
パフォーマンス・安全・そして人生の質を支える土台なんです。

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荏原先生おすすめデバイス

睡眠計測をする際は、やはり軽量であったりシンプルなものであったりをおすすめしますね。
面倒に感じてしまうと続かなくなってしまうので。

POLAR Loopは私も実際に使用していますが、軽くてシンプルなので使い勝手がいいですね。
詳細はアプリで確認できるので、毎日の記録として見ていると、「今日はすごく寝たのに、なぜメンタルステータスが悪いのか?もしかしたら夜遅くに食べたからかな?」「今日はぐっすり眠れた。ゆっくり湯船に浸かったからかも。」など、自分の行動と睡眠を紐づけて考えられるので、睡眠習慣の改善につながります。

まずは、自分の睡眠を可視化して気にかけてみることから始めるといいですね。

POLAR Loop
ヘルスケアバンド

  • 主に睡眠や活動量を計測。
  • スクリーンレスなので、通知やアラートもなく、シンプルで簡単に計測できます。

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Polar Ignite 3
スポーツ・ヘルスケアウォッチ

  • 睡眠や活動量だけでなく、しっかりとトレーニングも計測できるタイプ。
  • また、夜間皮膚温も計測できるので、自身のコンディションをより詳細に把握できます。Polar-Ignite-3-front-energy
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※Polarの製品は一般消費者向けのフィットネス・トレーニング機器であり、医療機器には該当しません。
また、疾病の診断・治療・予防目的では使用できません。


参照:健康づくりのための睡眠ガイド  2023https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/001181265.pdf